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【レポート】ふくしワザスキルアップ講座:伝わる写真の撮り方

2021年12月15日(水)、ふくしワザを利用する福祉事業所の職員に向けて、プロのカメラマンから広報で使用する写真の撮り方や撮影のコツを学ぶ講座を開催しました。講師には、大阪を拠点に活躍されているカメラマンの坂下丈太郎さんです。

伝わる写真の考え方

まず、一番大切なことは「適当に撮らない」ということ。

写真を撮る時、自然と自分の目線に合わせて撮る癖がついていませんか?意識して撮ろうと心がけると、移動して視点を変えたり、写り方を気にして撮影するようになると思います。これから、それぞれの場面に分けて撮り方を紹介します。共通して言えるのは、適当に撮らない、考えて撮るということです。

CASE1:建物を撮る場合

伝わるための写真の撮り方について、まずは建物の外観の写真を撮る時のコツについてお話します。

建物の写真が必要な時は「こんな場所ですよ」ということを伝えるためだと思います。写真が上達するコツはいいカメラを使うことよりも、「どうやったら伝わるだろうか」と考えてシャッターを切ることです。これは、何も考えずに撮った写真です。

ここから上達するポイントは2つ。

1つ目は「できるだけ不要な情報をいれない」こと。伝えたいモノが「建物」とはっきりしている場合、近接する建物や電柱、標識など、伝えたいモノ以外の不要の情報はいれないということを意識してください。不要な情報が写らないために、被写体に近づいて撮る・ズームを活用するなど撮り方を工夫してみてください。

2つ目は「水平と垂直」。

水平と垂直が取れている写真は安定感があります。カメラを傾けずに真っすぐに持つことや、建物の柱や壁を基準にして、縦・横の線がまっすぐになるよう意識してください。もし、どちらも合わせるのが厳しい場合は、垂直だけで合わせるとよくなります。

この2つを意識して撮った写真がこちらです。

また、水平と垂直が取れている写真を撮るためにはカメラの持ち方も大事です。カメラを構える時はきちんと脇をしめて、カメラがブレないように重心になるところに手を添えます。そして顔もカメラに対してまっすぐ。頭が傾くとカメラも傾きます。

自分の伝えたいモノが何かということを落ち着いて考えてから撮るようにすれば、ぐっと伝わりやすくなります。

失敗の写真ってどんな写真?

写真の良し悪しは状況により変わりますが、広報で使う上できちんと伝わらない「失敗の写真」について解説をしていきたいと思います。失敗と言われる要素は大きく3つ。

まず1つ目は「暗い写真」。写真全体が暗いと、伝えたいモノがうまく伝わりません。

2つ目は「ピンボケ」。撮りたい写真にピントがあってなくぼやけてしまうと、これも伝えたいモノが伝わりませんね。

最後、3つ目は「ブレている写真」。シャッターを切っている最中にカメラが動くと写真がブレてしまいます。

暗い写真・ボケている写真・ブレている写真は失敗の写真です。WEBサイトや広報物で使う際には選ばないようにしてください。

カメラの知識

カメラがどういった構造をしているのか、写真を撮る仕組みを知っていれば、ある程度失敗を防げます。

まず、カメラは光を取り込んで画像にする機械ということを覚えておいてください。光を取り込む機械なので、暗いところで撮ると黒が強い暗い写真に、明るいところで撮ると光が多くて白い写真になります。失敗の例として出した暗い写真は、光の量が少ないので暗くなる、ということですね。

カメラで写真を撮る時は、大きく「カメラのレンズの絞り」「シャッターのスピード」「感度」の3つを設定しながら写真を撮っていきます。オートでの撮影でも大丈夫ですが、この3つの設定で写真が撮られているということを覚えておいてください。

次に「光源」の話です。写真を撮る時に光がどのように当たるのかを意識するとぐんっと写真がうまくなります。光が右から当たっている場合と、左から当たっている場合。影のつき方が変わって写真の印象がだいぶ変わりますよね。

「光がどちらから当たっているか」「光源にあたる太陽や窓はどちらにあるか」「伝えたいものにきちんと光が当たっているか」など撮る時に意識してみてください。

また、光源にも「自然光」と「人工光」の2種類があり、それぞれ光の色温度が異なります。

撮った写真がオレンジ色っぽいな、青っぽいなと感じることがあると思います。原因は光源の色とカメラの設定が合っていないから。ポイントは人の肌の色に、色温度を合わせてあげることです。

まとめると、できるだけ明るい場所で、ピントを合わせて、シャッターを切ることを意識すれば各段に失敗の写真が少なくなります。

CASE2:モノを撮る場合

福祉事業所では、つくった商品を撮影することも多いと思います。

まず1つ目のアドバイスは、伝えたいモノの下に白い紙を敷いてみること。そうすることで、伝えたいモノがより目立ちます。

2つ目のアドバイスは、立体のモノを撮る時は上からではなく、横から撮ってみること。そうすることで、モノの立体感やサイズを伝えることができます。そして、その際は壁にも白い紙を貼る・白い壁で撮るということも忘れないでください。まずはシンプルに撮ることが上達の第一歩です。

商品の中にはすでに袋に入っているモノを撮る時があると思います。その時に意識をしてほしいことは光の反射です。素材の関係で光の反射はどうしても起きてしまうので、なるべく光の反射が気にならない角度を探してみてください。

シンプルに撮る技術が身についたら、次は使うシーンを想定して撮るということを試してみてください。

ティーバックであれば、淹れている様子やクッキーを撮り、写真を見た人に「美味しそう」などイメージが伝わるように撮れれば、より伝えたいモノが伝わります。

CASE3:活動やイベントを撮る場合

これも同様に、なぜ活動の様子を撮る必要があるのかということから考えてみてください。活動の様子をSNSや広報物で使用する場合は「素敵だな」、「一緒に活動をしてみたいな」と思ってほしいからだと思います。写真を見て、興味を持ってもらうためにも、誰が・何をしているかが分かるように写真を撮るのがポイントです。

例えばこの写真、いろんな要素が写っていてごちゃごちゃしていますよね。

伝えたいものが何なのか、伝えたい要素をきちんと絞ることが重要です。写真の切り取り方によって印象が変わります。寄ってみたり、逆に引いてみたり、自分が動いてベストアングルを見つけることを意識してください。

そして、きちんとイベントの様子やそこで活動している人を見る事が大切です。笑顔や真剣な表情は雰囲気を伝える一番の要素です。被写体との距離感を意識し、被写体や素材とのコミュニケーションを楽しむことで、自然な表情を撮る事ができると思います。また、身振りや手振りをしている様子なども意識すると、より伝わる写真が撮れるようになります。

また、みなさんのホームページやSNSでは、利用者の方やお客さんの顔にモザイクをかけている写真をよくみかけます。写真にモザイクをかけるとこれまで意識してほしいと伝えていた、きちんと伝わるための写真の要素も台無しになってしまいます。そのような場合は、手元のアップや顔が写らないように視点を変えるなど、モザイクを掛けない方法で写真を撮る事を意識してみてください。

活動やイベントを撮る時のポイントは3つ「何を伝えたいか考えること」「いい表情を狙うこと」「立ち位置を工夫すること」です。ごちゃごちゃした写真にならないように撮り方を意識してください。無理に凝った写真を撮ろうとするよりも、きちんと伝わる写真を撮ることが大切です。

まとめ

これで講座は終了になります。折角いい活動をしているのに、それが伝わらないともったいないですよね。きちんと誰に・どう伝えるかということを意識して「適当に撮らない」ということを覚えて帰っていただければと思います。

きちんと伝えるためには、きちんと考えることが大切ということを、改めて感じる機会になりました。

今回の講座が、福祉事業所のみなさんの活動や広報のスキルアップにつながることを願っています。

制作:ふくしワザ編集部